一人の理容師の人生を語った「自分史」です。「ヘアーサロン加納」

一軒目の就職先

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 ここは太陽商事と言う会社で、一階が理髪店・二階はマージャン荘・三階にその事務所が有り不動産の売買や金貸し等をしておりました。この理髪店は、いうなれば素人経営の組合に入っていない店でしたが、場所柄もあり理髪料金を高めに設定しており、働いて居る人達も結構腕の良い人ばかり、客層もお金持ちがかなり多かったです。

 始め働くときは、従業員全部で私の回りを取り囲み一人のお客を刈り終わるまで技術を眺め、そこの店長がその技術によって給料を決めるというものでした。私は技術もまあまあと言う事と高校を出ていると言う事で初任給は八千円でしたが三ケ月後に正社員となり一万円に上がりました。

 その他にはお客さんに貰うチップがかなり有り一万円全部家に入れても私の使う分には事欠きませんでした。此処は理髪椅子が八台有り理容師は私を入れ男子六人女子一人の七人で他にはレジには社長の娘が担当しておりました。

 同じ年代位の男子理容師が一人居りましたがこの方は私よりぐんと技術は下でした。男子スタップは私より年上の方が殆どので、二人は結婚をしており、女子の理容師さんは一人居りましたが、その当時で三十五、六才の方で旦那さんは大林建設に勤務されて居りました。

 又この女子の理容師さんはそのスタップの中では技術も一番優れており店長格でした。その内に私と同年代の人(中谷君と森田君)が入ってきまして、二人とは話も弾むように成り段々と馴染んで参りました。又三十五才位の岩谷さんと言う人も入りましたが、この人はあまり技術は上手では有りませんでした。又この頃私の兄も自分のお店が休みの時には頼まれてよくこの店にアルバイトに来ていまして、岩谷さんとも親しくなり、彼はたまに私の家に遊びに来るように成りました。

 この頃には、皆に馴染むと同時に大人の世界の醜さや嫌らしさも経験するように成って参りました。と申しますのは、専務(当時で四十才位、妻帯者で子供が二人おりそのうちの一人は障害を抱えているようでした。)とレジ係の社長の娘とが不倫関係にあり、その娘に横恋慕している事務員(関係は合ったのかも知れません)との三角関係とかで小説のような事が現実に有り、その事務員からの愚痴と社長の娘からの言い訳をそれぞれから聞かされたり、相談もされ私もえらい苦労をしたものです。

 私は高校卒(当時はあまり高校卒は居無く中卒ばかりで理容では特に皆無でした)と言う事と、割りと信用が有ったのか店の暇な時は三階の事務の方も手伝わされ伝票の整理や銀行への用事をさせられておりました。(その分他の人より可愛がられ事務の人とも仲良くなり給料も他の人より良かった様です。)

 私が入社した年の春、会社の休日に花見が円山公園で行なわれました。前日より茣蓙を敷いて場所取りをして賑やかに行はれたのですが、前に書きました女性のスタッフの金子さんが悪酔いを致しまして、せっかく良い着物を着てきたのですがその着物を脱ぎだし裸に成り始め、皆で押さえて止めるように説得したのですが「私の裸を見せてやるのだ、皆見れ見れ」と益々脱ぎだし押さえるのに苦労致しました。女の人でも飲み過ぎるとだらしなくなる者だなぁとその時初めて解りました。私も飲んだ時にはその様に成らないように心がけようと思いました。

太陽商事の花見

 次の日、金子さんは何ごとも無かったかのように店に出てきて普段通りに働いておりました。私は女の人も戦後は強くなった者だなとつくづく思いました。

 毎回の給料日には全員で向かいにあった寿司屋さんで一杯飲みながらお寿司を食べ、その後は若い男性達だけで薄野の売春宿二・三軒ひやかしに寄り(私はその様な所に行った事が無い為非常に興味が有りました。)まず、玄関は格子戸で中に入って見ると時代劇に出てくるお店の様な雰囲気で、地面より一段高く板の間がコノ字に成っており、其処に女性たちが十人位並んで居り、其の中より自分が気に入った娘を選択指名して部屋に行くらしのです。

 又その板の間の隅には格戸で囲まれた所に番頭さんみたいに座っている人が居り、其の人が帳場さんで、其処で会計をする様でした。皆は其処は料金が高いので冷やかしだけで菊水大門通りに有った売春宿で娼婦と寝てから帰ると言ったパターンだったようでした。

 私も、一度薄野から大門に行く途中大雨の中に見舞われ「著ってやるから泊まって行けと訪われいや結構です」と断ったのですが、遮二無二連れて行かれ、雨が止むまでと思い初めて売春宿の部屋に上がって見たのですが、四畳半の部屋に派出な布団が敷いてあり行灯と塵紙が置かさり、本当に映画に出てくるのと同じだなぁと思いました。

 只、私に付いた女性がかなり年配のあまり椅麗な人で無いことも有り酔いも覚め、雨も小降りに成って来たので断って帰ってきました。

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